登山をするうえで不安なことの一つ「遭難」。遭難にも色々ありますが、ここでは私の道迷い体験記と、その反省を生かした対策について紹介します。

仏果山・高取山縦走での遭難(道迷い)体験記
10年前の3月、山を始めたばかりの時のこと。私は平日休みで一人丹沢の仏果山から高取山への縦走に出かけた。春の兆しが感じられる季節で、空気は澄み天気は快晴。
仏果山・高取山は、神奈川の宮ケ瀬湖近くにある低山。標高は低めながらも、見晴らしの良い尾根歩きが楽しめる静かなルート。気軽な気持ちで出かけたその登山で、私は思いがけない道迷いを経験することになった。
林道からの誤ったスタート

登山口に向かう林道を歩いていると、道の脇にピンクテープが見えた。登山道の目印だと思い込み、何の疑いもなくその方向へ進んだ。テープは尾根に向かって続いており、踏み跡もあるように見えた。だが、それは登山道ではなかった。(実際には、林道を進みすぎており、手前に登山道があったらしい。)
しばらく進むと、道は不明瞭になり、尾根も急になり、土も脆くなってきた。ハイキングコースにしては道が不明瞭だな、とは思ったが、「そのうちわかりやすい登山道が出てくるだろう」「結構登ってしまったし、戻ってまた登り返すのも面倒だから」と楽観的に考え、進み続けてしまった。

今思えば、ここで引き返すべきだったんだよな・・・
不安と焦りの中で

そのまま尾根を上がり続けると、いつの間にかピンクテープがなくなり、尾根が細くなってきた。これは明らかにおかしい。間違えた。
そう思って尾根を下り戻ろうと思ったものの、いつの間にか急な脆い尾根に代わってしまっていたため、下るのがかなり怖い。どうしよう。
地図もコンパスも持っておらず、スマホのGPSも当時は普及していなかった。現在地も分からない。焦りと不安が募る中、ふと以前読んだ登山ガイドの言葉を思い出した。

迷ったら、沢を下らず、尾根を上に上がりなさい。
そうすれば、稜線か、登山道に出られる確率が高いから。
その言葉を頼りに、脆さはあるものの、とにかく尾根を登るしかないと思った。急登ではあったが、尾根は登山道にぶつかるまでずっと顕著な形状だったため、ただただ周囲の木につかまりながら慎重に登った。
しばらくすると、稜線上の登山道に出た。道標もあり、ちょうど登山者が歩いており、ようやく安心できた瞬間だった。

死んだかと思った・・(大げさ?)
その後の縦走と心の変化
登山道に戻ってからは、仏果山の山頂を経て高取山へと無事に縦走を終えた。山頂からの眺望は素晴らしく、春の陽射しが心地よかった。しかし、道迷いの経験は心に深く刻まれた。自然の中での「ちょっとした油断」が、命に関わる事態を招く可能性があることを痛感した。
反省点と学び
以下に、今回の道迷いの原因をまとめました。
1. スマホのGPSが普及していなかったこと
当時はスマートフォンのGPS機能がまだ一般的ではなく、登山用の地図アプリも存在しなかった。現在では多くの登山者がGPSを活用しているが、技術に頼るだけでなく、基本的には地図読みのスキルも必要だと感じた。
2. 低山でメジャーな山だから迷うはずがないという油断
仏果山・高取山は神奈川県内でも人気のある低山で、登山道も整備されている。だからこそ「迷うはずがない」と思い込んでしまった。しかし、どんな山でも道迷いのリスクはある。油断は禁物。
3. 地図とコンパスを持っていなかったこと

低山で、明瞭な登山道なので「迷うはずがない」という思い込みから、地図とコンパスを携行しなかった。これは登山者としての基本を怠った行為であり、大きな反省点である。
4. 地図読みをする意識・スキルがなかったこと
仮に地図とコンパスを持っていたとしても、ルートが不明瞭だという情報がなかったので、こまめに地図を見て現在地を確認することを怠っていたと思う。
また、現在地の確認を怠るということは、道迷いした時点での大体の場所も検討することも難しくなってくる。地図を意識的に読むことと、地図を読む力は、登山者にとって命を守る技術であり、面倒ではあるが積極的に学ぶ必要がある。
5. おかしいと思った時点で引き返すべきだったこと
道が不明瞭になった時点で、「おかしい」と感じていたにもかかわらず、引き返さずに進んでしまった。登山では「迷ったら戻る」が鉄則。判断の遅れが危険を招く。勘というのは大体あっていると思う。
6. ピンクテープを信じ切ってしまったこと

ピンクテープは登山道の目印として使われることが多いが、必ずしも正規ルートを示しているとは限らない。作業道や私有地の境界などに使われることもある。テープだけを頼りにするのは危険。

救われることも多いが、このテープが進むべき方向のためにある物なのかどうか、常に疑うことも大切。
よかったこと
唯一よかったのは、「迷ったら尾根を上に上がれ」という登山ガイドの言葉を覚えていたこと。ちょうど道迷いの1週間前に、登山ガイド同行で丹沢のバリエーションルートを歩いた際に、このことを聞いたばかりだった。
結果的にそれが登山道への復帰につながった。「知識はいざという時に命を救う」と、この時強く実感した。
まとめ
この恐怖体験を通じて、登山の基本を見直すきっかけとなりました。
この経験以降は、「低山でも何が起こるかわからない。」という気持ちをもって、低山でも舐めずに基本装備は必ず携行するようにしています。
山は癒しを与えてくれますが、同時に怖さも持ち合わせています。だからこそ、準備と心構えを怠らず、謙虚な気持ちで山に向き合うことが、登山者には大切だなと感じています。


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